このサイトは、武蔵大学同窓会の旧サイト(〜2018年11月まで)です。
リニューアル後の新サイトは、こちらからご覧ください。

■”藍染織館” 奈良県明日香村
  藍染織館館長 渡邊誠弥さん(12回経済)

アナウンサ一時代に偶然にも出逢った一枚の藍染めの油単、この布が人と人を結びつけ、人が布を結びつけ、布が神さまを結びつけ 、その神様が人に居る場所を与えてくださった。人生とは出逢いと運。

◆一枚の藍染の布との出逢いそしてひとつのことば

NHKに就職をして東京に勤務をしている時、サントリー美術館で開催されていた「日本の藍染展」で一枚の古藍布に出違う。それは明治時代末期の「大夜着・筒描染・出雲」とあり、背中に吉祥文様の束ね熨斗が大きく染め抜かれた素晴らしいものであった。ここから藍染の美しさに惹かれだ渡還さんの収集が始まる。その後、東京から松江支局に転勤になったことで幸運な展開がはじまるのである 。

昭和40年代は松江でも古い母屋や納戸の改築や新築をする物件が 相次いでいだ。幸い松江は古くから「手仕事の町」、古い藍染の嫁入り道具を処分する人も少なくはなかった。初めの頃は自分の足で 探していだが次第に布の情報が外から入ってくるよう|こなり、人に相談して探せば探すほど出逢いが重なり、収集の数が増していった 。

さらに年配のご婦人が語ってくれた「人の人生は藍染めに始まり 、藍染めで終わる」とのことぱに感動したという。「嫁ごしらえ」 といって嫁ぐ娘に夜具、夜着、祝い風呂敷、提灯袋、傘袋、鏡掛けを藍で染めてもたせ、嫁いだ娘が懐妊したとの知らせがあると、今度は「孫ごしらえ」といって産着、おむつ、子負い帯、湯上げ、足拭きを藍で染めて贈る。「藍すなわち愛」であること、人は一生の問、藍染めとは縁ガ切れないことなど、藍染めの魅力をたっぷりと 語ってくださった。 ここ松江で集めた藍染めの布の魅力を「ひとりでも多くの人に知ってほしい」という気持ちが、渡邊さんの「藍染織館設立」の夢につながっていった。

◆足を止めてもらうための奇策とは

明日香の村人にもなれた、藍染の収集量も十分に集まった。入れ物となる建物の準備もほぼ整った。しかしここ明日香の地に訪れる 観光客の人たちにゆっくり染織館を見てもらうためには、食事のできる環境が絶対に必要と考えた。そこから渡還さんは心機一転、平 成5年、静岡県の伊東にある、蕎麦 打ちの「昭和の大名人」と、渡邊さんが崇拝する片倉康雄氏の「蕎 麦道場」の門を叩いたのである。 そこでの2年間、仕込みに仕込まれ、ついlこ「蕎麦屋」の亭主となってまだ明日香村に戻ってきたのである。

平成17年(2005年)秋には10万食分の蕎麦打ちを達成した。並みのひ とではできないパワーの持ち主である。そして何ごとにも「強いこだわり」を見せる渡邊さんが打った蕎麦、食後にいれてくださった コーヒーも実に美味しかった。「それにしてもねえ、来 る人来る人が口を揃えて結構な道楽だ、と言われるのがつらい。開館してこの春で15年目を迎えるけれど毎年赤字なんです。どうも僕は武蔵大学“不"経済学部の出のようですね」とのんびりと笑った。