何事にものめり込みやすい性格のせいか、すぐに近くの堤防や砂浜では飽き足らなくなり、大荷物を担いで遠征するようにもなった。以前は文学に注ぎ込んだエネルギーが海と魚へ向かい、様々な釣りのジャンルに手を染めたが、なかでも熱中したのがウキ釣りである。堤防や岩場からコマセ(魚を寄せるためのエサ)を撒き、小さなウキをセットした仕掛けでクロダイやメジナという魚を狙う釣り方だ。
海面を漂うウキはどこか言葉に似ている。竿、リール、糸、ハリといった仕掛けに組み込むことで意味を持ち、その動きを通して海中に潜む文脈を読み取る。文脈を的確に読み取るには、海洋学とか気象学、地学とか生態学といった知識が必要なのだ。漫然と糸を垂れるというイメージからはほど遠い。魚からの返信がないとすぐに諦めてしまうようでは釣り師失格、半日もアタリがないのに何も工夫しないようでも魚は釣れない。気が長くて短気。それがよい釣り師の気質と言ってもよい。
名刺にはフリーランスライターのほか、フィッシングライターという肩書きが付くようになった。行動範囲も広くなり、北は北海道から南は沖縄まで、遠くボルネオ島(マレーシア領カリマンタン島)やパラオ諸島へも足をのばした。韓国へは何度も足を運び、朝鮮日報社が発行する「月刊つり」という分厚い雑誌に連載ページを持ち、やがて一冊にまとめられた。私が韓国で釣りをする様子はフィッシングビデオとなって韓日両国で発売された。釣りに関する著書は10冊以上に及び、生活のほとんどが釣りを中心に回るようになったのである。
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