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■サルパワーをもらった金華山実習


 金華山実習は、武蔵大学で最も特色ある科目です。文系の大学ながら、理科系の科目があります。クリスマスを挟んで、2005年12月22日から27日まで、金華山島でサルとシカを観察しました。通年の科目とは違い、事前ゼミ、現地フィールドワーク、レポート作成が課題です。今年の冬はとても寒く、最低気温はマイナス4度、営林署小屋で自炊しながらの調査でした。小屋では、七輪で暖を取りつつ、ホタテやカキなどを焼いて食べましたが格別の味でした。毎日の炊事・水仕事は、谷からの氷水で大変でした。いかに親に依存しているか、いかに豊かな暮らしをしているのか、山小屋暮らしで実感しました。
 私たち参加学生は、引率の丸橋教授とともに、朝東京を出発して、仙台駅経由で石巻駅で下車しました。生鮮食料品を石巻で調達し、鮎川港から船で30分で金華山へ着きます。鮎川は、昔は捕鯨基地として世界的に有名だったそうです。ホエールランドのキャッチャーボートの大きさに驚き、実物の捕鯨砲を見て、捕鯨の盛んだった日本の秘密を知りました。
 金華山島は、宮城県の牡鹿半島の約1km先に位置する、周囲約26km、面積約10平方キロメートル、標高445mの島です。島には、由緒ある黄金山神社があり、島全体が聖地となっています。島の国有林には、すばらしい森が残されています。海をいつも見ながら山歩きをして、偉大な風景に感動しました。
 シカは毎日見ることができましたが、サルはなかなか見つかりませんでした。4日間観察し、最終日にサルの群れを4時間ほど観察できました。金華山島では、これまでニホンザルの長期研究が続けられています。サルと人の間によい関係が築かれており、サル達は人を怖がらず、驚くほど近くで行動を観察することができます。2005年の冬はブナの豊作年で、ブナの実採食が多く、グルーミングやこども同士の遊ぶ姿などサルを追いかけながら観察できました。体が吹き飛ばされそうな寒風の中、森に生きる動物たちの、当たり前の生命力から強い力をもらった気がします。「学ぶには、人と出会うこと、書物と出会うことも大切だけど、自然しか教えられないものがある」という丸橋先生の言葉の意味が少し理解できた気がします。
 帰り道、石巻の仙台味噌で有名な老舗「長寿味噌」に立ち寄りお土産を買っていたら、「どこの大学ですか?ひょっとして武蔵大学?」とお店の方に声をかけられました。「はい」でもなんだろうと疑問に思っていたら、武蔵大学同窓会の木村重紀さんの出身が牡鹿町で、木村さんが私たちのためにお土産の手配をしてくださっていたのです。木村さんのお兄さんは牡鹿町の町長をなさっていたそうです。金華山や石巻が、武蔵大学の先輩の地元であると知り、武蔵大学のひろがりと人の繋がりに驚きました。私にも、卒業後、武蔵大学とどこかで深い縁を感じられるような出会いがあるかもしれません。
 武蔵大学のホームページにも、金華山実習の写真が載っています。(自然科学系科目の紹介ページ)よかったらこちらもご覧下さい。

 

(報告者:伊藤有希子、比較文化)