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■第15回土曜講座

   日本人の知らない邦楽? 〜武藏な日々の琵琶と箏〜


 平成16年2月21日、8号館8702教室で第15回武蔵大学土曜講座が開講された。演題は「日本人の知らない邦楽?〜武蔵な日々の琵琶と箏〜」で、講師には本学16回生で箏奏者の三森育子さんと、35回生の琵琶奏者、坂田美子さんが招かれた。開講のあいさつで登場した横倉尚学長は「春にふさわしい催しになった」と述べた後、卒業生の芸能分野での活躍を喜んだ。続いて講師が紹介され、三森さんが今回の演題について「現代ではなじみが薄いものとなってしまいましたが、今日は少しでも邦楽の知識を得ていってください」と語った。

箏の演奏   講義は、三森さんによる筝の解説から始まった。箏の伝来や歴史などをはじめ、山田流と生田流の違いや、海外における筝曲の評価などが語られた。また、近代筝曲の開祖である八橋検校の没年がJ・S・バッハの生年であることにも触れ、「バッハ以前の音楽」として八橋検校の『六段の調べ』と吉沢検校の『千鳥の歌』の二曲を演奏した。

  その後、箏の構造についての説明を挟んで現代箏曲が奏でられた。曲目は小倉百人一首の和歌五首それぞれに旋律をつけた作品『平安恋歌』。時間の関係で河原左大臣と光孝天皇の二首のみの演奏ではあったが、平安王朝時代の華やかな雰囲気が再現された。

  琵琶を抱えて登場した坂田さんは「琵琶は箏よりもさらにマイナーな楽器なのでは」と前置きをしてから、琵琶法師が演奏することで知られる平曲の解説を始めた。次いで演奏されたのは那須与一が海に浮かんだ小船の扇を見事射抜くという有名なエピソードを歌った『扇の的』。受講者たちは、荒くれる波や放たれたかぶら矢を見事に表現した音色に聞き入っていた。

  演奏後の琵琶本体に関する講義では、ギターのフレットにあたる「駒」が、琵琶の音色の余韻を残すために最も重要なところであると説明された。最後は坂田さん本人が現代の言を使って作詞作曲したという『つるの恩返し』から「つる」の演奏をし、すべての演目が終了した。

  「つる」の演奏の後、講師の二人は並んで正面に立ち、三森さんは「演奏させていただき、ありがとうございました」、坂田さんは「ここで演奏することができて嬉しかったです」との謝辞を述べ、退場した。琵琶演奏

  この講座に出席して、初めて本学の卒業生に伝統芸能の分野で活躍する方がおられることを知った。三森さんがおっしゃっていた通り、実際に触れる機会こそ少なく
なってしまったが、講師のお二人のような方が活躍されている限り現代から邦楽が消えてしまうということはないと思う。三森さんが演奏された、平成の箏曲『平安恋
歌』、また、坂田さんが最後に演奏された「つる」を聴いて、一層その思いが強く
なった。 (新聞会)
 

<講師紹介>    
三森 育子(16回生、経済、櫻井ゼミ)    
  山田流箏曲教授各和ミホ氏に師事。
「新箏曲人の会」正会員、山田流箏曲教授。
我孫子市3曲協会会員。
海外での講演活動に加え、個人・所属団体の演奏活動の中で、小中学校への訪問演奏、体験指導、福祉施設等へのボランティア演奏活動等の普及発展に努める。
   
       
坂田美子(35回生、日文、小笠原ゼミ)
   
  薩摩琵琶を半田淳子氏に師事。
第40回日本琵琶コンクール第1位、文部科学大臣賞受賞、桐朋短期大学講師。武蔵大学在学中より各国で演奏活動をはじめ、古典から現代にいたる幅広いジャンルで講演活動の他、テレビドラマやCMの録音等でも活躍。現代語を取り入れる等、様々な試みをオリジナル曲の創作、発表にも力を入れている。